狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅨ―ⅵ 異物Ⅵ
そして…
そんな彼女の後方から人の足音が近づいてくる。
咄嗟に角を曲がり、身を隠したウィスタリア。
息をひそめながら人が通り過ぎるのを待つと…視界の端にうつったのは先程キュリオの元にやってきた間の悪い…あの女官だった。
「……」
ウィスタリアは気配を殺しながら彼女の後をつける。
やがて立ち止まった女官は尾行されている事も気付かず…ひとつの扉へと入って行った。
「…馬鹿な女…」
―――嘲笑うかのように口角をあげ、扉を見つめる恐ろしい形相の女神。普段の彼女からは想像も出来ぬほどに…粗暴な言動と行動だった―――