狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXX 異物の排除



「お待ちくださいウィスタリア様!!困りますっ!!」



女官は慌ててウィスタリアの腕を掴もうと右手を伸ばした。
すると…その腕をするりと交わした彼女は、女官の腕へと視線を落とした。



「……」



無言のまま瞳の温度を下げたウィスタリア。女官が抱えているそれは…今朝キュリオが大事そうに抱えていた"何か"とまったく同じものだったからだ。



(…やはりあれが…)



「…キュリオ様が貴方をお呼びになってるわ。
私はマゼンタを連れてちょうど帰るところだったから…ついでに伝言を頼まれてきたの」



「…キュリオ様がウィスタリア様に頼み事を…?」



いくら城の主(あるじ)とはいえ、キュリオが客人に対してそのようなことを頼むだろうか…?腑に落ちない女官は疑いの眼差しを目の前で微笑む美しい女神へと向ける。



「大事な姫の話も伺っているわ…それでもまだ私を疑っているのかしら…?
城の間取りもわからない私がここに来られたのも…キュリオ様からお聞きしたからという事にならない?」



女官から腕に抱く"それ"を受け取ろうとウィスタリアが長い腕を差し出してきた。



「そ、それは…」



(たしかに…言われてみれば…)





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