狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅩ―ⅴ 異物の排除Ⅴ
(…痛みが怖いわけじゃない…)
(…これでこのひとの気が晴れるのなら…)
「……」
アオイはそっと瞳を閉じた。諦めというより…大きな優しさのようなものが彼女の心を満たしている。
―――その時…
「キーキーうるせぇんだよ」
突如現れた聞きなれぬ声。
「…なっっ!!だ、だれ…っ!?」
弾かれたように振り返ったウィスタリアは…声のしたほうへ睨みを利かせている。城の者に目撃されたと思ったのだろう。怯んだように一歩二歩後ずさり始めている。
「…甘い血の匂いに誘われて来てみれば…こんな面白い展開が待っていたとはな…」
ギラリと光る紅の瞳が獲物を狙う鬼のようにみるみる鋭さを増していく。そしていつからいたのか…彼はすでに窓側のソファに腰掛けていた。