狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅩ―ⅵ 異物の排除Ⅵ
(…窓から出入りするなんて城に仕える身じゃないわ…)
「…血?あなた…まるでヴァンパイアみたいな事を言うのね…」
嘲笑うように口角を上げたウィスタリアは薄ら笑いを浮かべている。
「…そうだとしたら…?」
漆黒の髪を風に揺らしながら…青年は長い手足を投げ出し面白そうに笑っている。
「…もしそうなら…この子供をくれてやるわっっ!!跡形も残らないように存在すべて消し去って欲しいのよっっ!!」
高らかに笑う彼女だが、男はやれやれ…とため息をついた。
「…言われなくともそのガキは俺の獲物だ」
立ち上がる素振りを見せ…片足に力を入れた男。
「…汚ねぇ手で触るんじゃねぇ…」
身の毛がよだつような彼の唸り声がウィスタリアの耳を掠めたかと思うと…手の中にあった赤子の姿が見当たらない。