狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅩ―ⅶ 異物の排除Ⅶ
「…な、なに…?何をしたの…」
あっという間の出来事にウィスタリアは混乱している。
(…早くしないと人が…)
そして…気ばかりが焦り、自分の置かれている立場が逆転してしまったことに彼女はまだ気が付いていない。
「…痛いか?もう少し我慢できるな?」
「…っ…」
涙と血に濡れた赤子の目元を親指で優しく拭う青年。アオイは大きな瞳を潤ませて目の前彼の顔をじっと見つめている。
さっきとは打って変わった優しい男の声に気が付いたウィスタリアが再度ソファへと視線を向けると…彼は先程と同じ姿勢のまま今度は腕に赤子を抱いていた。
「…ま、まさか…」
嫌な汗がウィスタリアの額を流れ、ガクガクと体は小刻みに震えていった。
(神がかりな速さに赤い瞳…血の匂いを嗅ぎ分ける事が出来るなんて…)
「…ほ、本物の、ヴァンパ…イ…ア…?…」