狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅩ―ⅷ 異物の排除Ⅷ
「…すみませんキュリオ様…マゼンタ戻りましたぁ…」
ガラスの扉が開き、恥ずかしそうに姿を見せたのは先ほど派手にやらかした五の女神と呼ばれる彼女だった。
マゼンタの後ろで静かに閉じた扉からは他の者が入ってくる気配は感じず…訝しげに眉を寄せたキュリオは彼女に問う。
「…ウィスタリアが君を呼びに行ったと思うのだが…彼女に会わなかったかい?」
ピタリと足を止めたマゼンタはテラスを見回し、姉の姿がないことにようやく気が付く。
「…えぇっ!?…えっと…(嘘!?…なんで?どこに行っちゃったの…ウィスタリア…)」
冷や汗をかきながら必死に言い訳を探そうと瞳を彷徨わせているマゼンタ。彼女の動揺にキュリオは気づかないはずもなく…
「…彼女に会ったのか会わなかったのか…それだけ答えてくれればいい」
立ち上がろうとしたキュリオは彼女の様子に苛立ちを見せている。
(…キュリオ様に嘘が通せるわけない…ごめん…ウィスタリア…)
「すみません、ウィスタリアには会っていません…」