狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXI―ⅰ 獲物Ⅰ
(アオイが見える場所にいないからだろうか…)
いつも抱きしめている小さなぬくもりを思い出そうと手のひらを軽く握ってみる。
すると…
一瞬…涙に頬を濡らした彼女の表情が浮かび…生ぬるいものに触れたような感覚があった。
「……」
(違う…私が逢いたいのは笑顔の彼女だ…)
しかしキュリオは何度笑ったアオイを想像してみても同じ表情、同じ手触りを感じてしまう。
「…何かおかしい」
(城にいるのに彼女に危険が及ぶわけが…)
「え…?キュリオ様…っ!?」
居ても立ってもいられなくなったキュリオは、ガタッと勢いよく立ちあがり長い銀髪を靡かせ…マゼンタを置き去りにしたままテラスを飛び出していった―――