狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXI―ⅱ 獲物Ⅱ
「言っとくが…俺はキュリオみたいに優しくないからな」
「…獲物を傷つけられてとっくに気が立ってんだよ」
「うるさいっっ!!あんたも一緒に死ねばいいのよっっっ!!!」
叫びながら向かってくるウィスタリアにそこまで呟いた青年は右手でアオイの体を抱え立ち上がると…次からの動作は一瞬だった。突進してくるウィスタリアの攻撃を軽々と交わし、彼女の胸へと彼の強烈な蹴りが炸裂する。
「…忠告したぜ?」
静かに燃えさかる怒りを含んだ紅の瞳は優しさなど微塵も感じさせず…ウィスタリアの細い体が壁に激突する間際、彼女は世にも恐ろしい相手を敵に回してしまったと痛感した―――
(な、なぜ…っ!?…た、たかがヴァンパイアごときに…)
―――ドォンンッ!!
骨がいくつも砕ける鈍い音が室内に痛々しく響き…
「…ガハッ…ッ!!」
血反吐を吐いたウィスタリアの体は壁にめり込むように激しく叩きつけられたのだった―――