狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXI―ⅹ ティーダとアオイ・ひとつの運命の歯車Ⅳ
近づく複数の気配にティーダはもう一度腕の中のアオイへと視線を落とした。
「こんなかたちでお前を巻き込むつもりはなかったんだが…」
「…ごめんな」
「…っ…」
彼に切ない笑みを向けられ…アオイは戸惑ってしまった。先程までキュリオに会える嬉しさに心を高鳴らせていたはずなのに…なぜか…手放しで喜べない。
戸惑うアオイに気づかないティーダは小さな幼子をソファへ座らせようと考えたが、暴走したキュリオの攻撃に彼女が巻き沿いをくらってしまうかもしれないという不安がよぎる。
「俺の腕の中でいいか…?」
ティーダがアオイに同意を求めると―――
グラリと視界が歪み…彼の足元が急激に不安定になる。そしてその体はゆっくり沈み始めていき…
「…っ!?」
一瞬驚いて床に目を向けるが、まるで液状化してしまったようにティーダの体はどんどん飲み込まれていってしまう。
「…この気配」
気が付けば部屋中に仄暗い靄(もや)が漂い…ティーダは眉間に皺をよせあたりを伺う。
彼はため息とともに漆黒の翼を広げ、己を捉える妙な術から抜け出そうと大きく羽ばたいた―――