狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXII 揺れる心
…しかし
足元から這い出た巨大な鎌によって彼の体の自由は奪われてしまう。
「…何の真似だマダラ」
ティーダは肩にかかった大鎌からアオイを守るように彼女の全身を両腕で覆った。
『ふふっ…キュリオ殿とやり合うつもりだろう?』
どこからともなく響いた冥王の声。言葉の内容はともかく、どこか楽しそうなのは彼の元からの性格なのだろうか…
「邪魔するんじゃねぇよ」
―――グッ
不機嫌そうに言い捨てた紅蓮の王の声に冥王の大鎌が強く腕にめり込んできた。そしてタラリと流れたティーダの鮮血―――
「……」
『…今の君が勝てるわけない。"若気の至り"じゃすまない相手だってわかってる?』
「…俺に関わるな。中立の死の国は手出し無用のはずだぜ」
『…賢くない生き物は嫌いだよ…』
急速に温度を下げた冥王の声。ゾクリとする冥王の殺気は彼独特の死を匂わせる不気味なものがある。
『…腕の中のモノを生かしておきたいなら僕の言うことを聞いたほうがいいと思うよ?…』
「お前…本気か?」
『…さぁね?』
クスクスと笑う冥王の声とは裏腹に…大鎌はどんどんティーダの腕を痛めつけていく―――