狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXII―ⅳ 揺れる心Ⅳ
「……」
ティーダの体が吸い込まれていった床をじっと見つめるアオイ。自分を守ってくれた優しい腕に…驚いたように見開いたあどけない彼の瞳。そして己を貫こうとする気高き孤高のオーラ…
キュリオのように器用な優しさではないが、アオイには彼の不器用な優しさが心にあふれるほどによく響いた。
『アオイッ!!』
―――次の瞬間…
彼女の背後から銀色の光が漏れ…叫び声とともに神剣を引き抜いたキュリオが室内に飛び込んできたのだった―――
「…っ!?」
怒りに顔を歪めたキュリオの目の前に広がったのは血にまみれて倒れている女官の痛々しい姿と…
それ以上に大怪我を負い…壁にめり込んだウィスタリアの姿だった…。
すぐさまキュリオは後方に待機する侍女たちへ、治療にあたらせる魔導師を呼びに行かせると、
「…アオイ…?」
キュリオは血の気が引く思いで一歩、また一歩と室内を歩きはじめる。的中してしまった嫌な予感にカタカタと神剣を持つ手が震えている。