狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXII―ⅷ 揺れる心Ⅷ
やがて駆け付けた魔導師たちの治療により負傷した女官とウィスタリアは数時間後無事、目を覚ますこととなる。
そして血まみれで倒れていた女官の証言により、ウィスタリアの奇行が明らかになり…彼女は城への出入りを生涯禁止されてしまうのだった。
―――後に紅の瞳をもつヴァンパイアの正体を知った彼女は、それからというもの…必要以上にヴァンパイアを怖がり、赤いものを恐れるようになったという―――
…そしてあの一件以来、キュリオはますますアオイを手放そうとしなくなった。
四六時中彼女を腕に抱き、自力でキュリオの腕を脱出しようとするアオイの行動は彼の手によって悉(ことごと)く阻止されてしまう…。
「…」
キュリオは時折悲しそうに自分を見上げるアオイの眼差しに胸が痛んだが…どうしようもない不安が彼の心を支配していた。
「キュリオ様、このままでは姫様は足腰が弱い御子になってしまいますぞ?」
心配したガーラントが気遣わしげに二人に近づいてきた。