狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXIII 鍛冶屋(スィデラス)・ダルド
すると立ち止まったガーラントはキュリオへと向き直ると…
「全てはキュリオ様のお心のままに」
片膝をついたガーラントは最大の尊敬の意を込めて己の王へと深く頭を下げた。
万が一、キュリオが感情を暴走させてしまったとしたら…親交のある王以外、彼を止められるのはこの大魔導師ガーラントぐらいだろう。それくらい彼は冷静で、物事の判断を見極める能力にたけている。
キュリオは大魔導師のその様子に小さく頷くと赤子を抱いたまま城に入っていった。
と、その彼の後ろを女官と数人の侍女がついてくる。
するとキュリオは振り返り…
「急ぎですまないが…明日の朝に間に合うようにこの子の正装を用意できるだろうか?」
すると微笑み一歩前に進んだ女官が胸を張って答えた。
「問題ございませんキュリオ様。すぐに腕の良い仕立屋(ラプティス)をお呼びいたしますわっ」
弾むような音を声に載せて返事した女官と同様、大きく頷いた侍女たちも喜びの声を上げている。その様子からアオイの傍に仕えていた彼女たちが待ちに待った瞬間に心躍らせているのがわかる。
「いつもすまないね…あと鍛冶屋(スィデラス)にも声をかけてくれるかい?」
「…鍛冶屋(スィデラス)でございますか?」