狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXIII―ⅰ 鍛冶屋(スィデラス)・ダルド Ⅰ
わずかに戸惑いを見せた女官は、彼の腕の中にいるアオイとキュリオの顔とを見比べ…
「お、お言葉ですがキュリオ様…姫様にはまだお早いのではないかと…」
すると驚いたような表情を浮かべ、キュリオは小さく笑った。
「いや、アオイに何かを持たせようと言うのではないよ?しかし…そうだな、髪飾りを頼むのも有か…」
キュリオは以前、彼女と中庭を散策中に見つけた小さな可愛らしい花に似せ、髪飾りを作ってもらおうと考案していたのだった。
(…思い返してみればアオイにしてやりたい事が山のようにあった…)
「そういう事でございますね。かしこまりましたっ!」
微笑みと共にその場をあとにした女官と侍女たちは、キュリオに頼まれた職人たちを集めるべく慌ただしく動き始めた。
―――日が高くなり、朝早くから鉱物を探しに出かけていた鍛冶屋(スィデラス)のダルドは銀色の瞳を空へ向けると小さく呟いた。
「…誰か訪ねて来る。家に戻らないと…」