狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXIII―ⅳ 鍛冶屋(スィデラス)・ダルド Ⅳ
ダルドは武器を生み出す才能に突出しており、それを必要としている相手を一目見ただけで何がその者に向いているのかを見極めることができる。
そして噂では料理長のジルが愛用している包丁なども彼が作ったという話もあり、何をさせても難なく仕上がってしまう程に多才である事は間違いない。
ぼんやりと悠久の城でのやりとりを思い出していると、馬の鳴き声と共に人の気配が近づいてきた。
―――コンコン
扉を叩く音がして、礼儀正しい男の声が響いた。
「失礼いたしますダルド様。キュリオ様よりご依頼でございます」
『うん。開いているよ』
すでに待ち構えていたダルドが返事をかえすと、ゆっくり扉が開いた。
「今回はどんな用件かな?急がないならいいのだけど、早急な事だったらある程度準備したいと思ってるんだ」
ダルドは立ち上がり、手元の鞄にポンポンと手をのせると家臣に話を促す。
「はっ!
期限は明日の朝、見習いの剣士と魔導師への武器をひとつずつ…それと…」
「…明日の朝か」
顎に手をあて考え込む彼は、まだ言い終わらぬ家臣の言葉に顔を上げる。
「…それと?」
「ピンク色の花の髪飾りをお願いしたいそうです」