狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXⅣ―ⅹ カイとアレスの武器Ⅹ
「俺だけの武器…」
何とも誇らしいその響きにカイの心と瞳はどんどん輝いていく。
「はいっ!!よ、よろしくお願いしますっっ!!!」
慣れない敬語を使い、精一杯の気持ちを込めてカイは頭を下げた。
そして…震える手を抑えつつ、何とか自分の名を書き記すと…
―――シュルシュルシュル…
解読不能な魔方陣の文字が青色に輝き始め、徐々に光は立体的なものへと変化していく。
―――カッ!!…―――
魔道書の中で激しく波打つ魔方陣の光が閃光さながらに光を放つ。
すると、ダルドはすかさず空いているほうの手で白くにごりのある鉱物を中心におさめた。
『…汝その姿を変え…主(あるじ)となる"カイ"の力となり、彼を助けよ…』
―――ザァ…
魔道書からあふれる光を受けたダルドの白銀の髪と瞳は、美しい青色に染まり…彼の言葉とともに白い鉱物は魔方陣の中に吸い込まれていった。
…ゴクリ
いつの間にか彼の周りには、鍛錬の手を休めた剣士たちが固唾を飲みつつ取り囲んでいる。
そしてダルドの手の上にある魔道書の中、今も青色に輝く魔方陣は外側から中心に向かって…繰り返し光の波を打ち出していた。
「…あとは時が来るのを待つだけです。キュリオ王、次に参りましょう」
彼は広げていた分厚い魔道書を閉じ、スタスタと歩き始めてしまった。
「では、私たちは一度失礼するよ」
軽く片手をあげ、その場をあとにしたキュリオ。
「あ、ありがとうございましたっっ!!」
隣りで顔を赤らめ、興奮したようにお辞儀をしているカイ。
(…いいぞカイ、少しは礼儀というものが身についてきたみたいだなっ!!)
ブラストはそんな彼に少しばかり関心していると…
「ダルド、次は魔導師の塔だ」
(…魔導師の塔…?)
(…アレスか?…)
遠くから聞こえた美しい王の言葉に、ブラストは反射的にアレスの顔を浮かべていたのだった―――