狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXⅤ―ⅰ キュリオとダルドの出会いⅠ
考えてみればダルドとアオイの共通点も多い。
―――ひとりではとても歩き出せない生まれたての赤子も同然…―――
冷たい小雨が降りしきる中、銀色の瞳に白銀の髪をもつ元銀狐の彼はあまりにも目立ちすぎる。
『おいっ!!そっちにいないか!?』
『白銀の髪だ!!この暗がりならすぐ見つかれるはずだぞ!!探せっ!!』
その彼が小さく肩を震わせている理由(わけ)は、この冷たい雨のせいか…それとも、遠くに聞こえる猟師(キニゴス)たちの声か…。
森の中、ひっそり身を隠していた彼の姿を偶然目にした人間たちは…人型霊獣とも知らず彼を生け捕りにしようと考え、森の奥地にさえ足を踏み入れるようになっていたのだ。
(…さむい…だれか、たすけて…)
身を温める衣類などなく、銀狐(シルバーフォックス)だった頃の上質な毛並みが体を覆っているわけでもない。
それでも彼はなんとか人目を逃れようと、暗い森の中へ…さらに奥へと移動していくしかなかった。