狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXⅤ―ⅲ キュリオとダルドの出会いⅢ
…どれくらいこうしていただろう。雨の音は激しさを増し…
―――が、突如。真っ白な肌を突き刺す冷たい雨の感触が消えた。
「これは珍しい…」
穏やかな…落ち着きのある男の声に、膝を抱えたダルドはゆっくり顔を上げていく。
「…だ、れ…?」
不安に揺れる銀色の眼差しは、まるで怯えた子猫のように睨むこともできない。
(…きれいな…空色の瞳…)
ダルドが好きな…晴れた日の悠久。こちらを覗き込む青年の瞳には雄大な悠久の青空が広がっていた。
「私の名はキュリオ。助けを呼ぶ声が聞こえた気がしてね…」
そう呟いた絶世の美を誇る青年は、降りしきる冷たい雨をもろともせず…あたたかな日の光のように微笑んでいる。
―――そして…
ダルドへ降り注ぐ暗い雨を遮っていたのは…彼の背にある見事な純白の翼だった―――