狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXⅦ―ⅱ 姿を消したダルドⅡ
…が、脱衣所として設けられた手前の部屋に人影はなく…変わったところと言えば彼のために用意しておいたバスローブがなくなっている事くらいだ。
「ダルド様っ!?」
はっとした侍女は急いで湯殿へと続く扉を左右に開け放った。
湯煙が上がる中、必死に目を凝らしてみてもキュリオの友人の姿は見当たらず…
「…うそ、一体どこへ…」
ふたつの扉を隔てて待っていた彼女の横を彼が通り過ぎた形跡などなく、扉以外を使ったのだとしたら…中庭を見渡せる、この開放的な湯殿奥からそのまま飛び出したとしか考えられなかった。
「…大変っ!だ、誰かっ!!」
いくら二階に位置するこの部屋といえど、普通の民家とはくらべものにならないくらいの高さがある。落下しようものなら怪我をするだけではすまないかもしれないのだ。