狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXⅦ―ⅲ 姿を消したダルドⅢ
―――ダルドと話をしようと待っていたキュリオは広間のソファに寄りかかり、悠久の歴史が事細かに記してある分厚い本へと視線を落としている。
この時のキュリオはわざわざ目立つような黒縁の伊達(だて)眼鏡をかけていた。当時の彼はこの眼鏡をかけている時、
"自分の事は気にしなくていい、仕事をしているわけではない、皆も自由にしてくれていい"
このような意味合いを言葉なく周囲に伝えている手段としてよく利用しているのだった。
そして、次のページをめくったところでバタバタとこちらに近づいてくる足音に顔を上げた。
(…なんの騒ぎだ?)
開いたままのページへしおりを挟み、脇机へ本を置くと同時に勢いよく扉が開いた。
―――バタンッ!!
「…った、大変ですっ!キュリオ様っっ!!」
「…何事だい?」
息を切らせて走ってきた侍女の様子を見るからにただ事ではないことはよく伝わってくる。
思わず立ち上がったキュリオは、次に思ってもみなかった言葉を耳にし目を見開いた。
「ダルド様のお姿がっ…見あたりませんっっ!!」
「…なんだって…?」