狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXⅦ―Ⅶ ダルド・狭き世界の中でⅢ
『…その後はどうするの?』
『ん?生きてる限り終わりなんてないさ。大地をめぐるその中で自分が何をすべきかを見極める』
(生きている限り終わりなんてない…自分が何をすべきかを…)
まだ小さなダルドだが…彼がいかに素晴らしい考えを持っているかがよく伝わってきた。
夢を話す彼の瞳は輝いており、その切れ長の眼差しは遥か遠くのまだ見ぬ地へと向けられているのだった。
明確な意思をもち、大地を駆けぬける彼らはとても美しかった。
そして漠然と思い浮かべる程度のダルドにとって遥かな地を目指す事はあまり意味のない事だったが…仲間とともに駆ける大地は、とても…とても楽しかったのだ。
―――そしてある時、目を覚ましたダルドが見たものは…
昨晩、共に駆けていたはずの仲間の死…。いつしか、幼いダルドに舌打ちしていた少し意地の悪い先輩銀狐だった。
そしてそれはダルドが成長するにつれ、その光景は珍しいものではなくなっていった…
終いには…自分よりもずっと若いはずの銀狐までもが冷たくなって動かなくなってしまったのだ。
『みんな…?どうしちゃったの…?』
戸惑い、悲しみに暮れるダルドは自分を守り、いつも傍にいてくれた体の大きな彼へと近づいた。
『…命の終焉は寿命だけじゃない。病がそれを早める場合がある』
勇ましかった彼の威厳のある声はわずかにかすれ…美しかった毛並みもいくぶん艶が失われている気がした―――