狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXⅧ―ⅳ アレスの役目Ⅰ
「キュリオ王、アレスの杖いつでも創れる」
カイの剣を生成中の魔導書はまだ輝きを放っているが、彼曰く"熟練者の武器でなければ同時に創る事は可能"だそうだ。
「では奥の部屋に行こうか」
四人は連れだって研究室の奥の部屋へと足を進める。
そこには高い天井まで届きそうな勢いの本が無限に並べられており、ガーラントがよく引きこもっている部屋のひとつだった。
ひんやりとした空気の中いくつもの燭台に火が灯され、中心には彼らの影がはっきりと映し出された。
「アレス、これから君だけの杖をダルドに創ってもらおうと思う」
「は、はいっ!もしかしてそれが新しいお役目と何か関係が…?」
賢いアレスはさすがに察しがいい。
同席したガーラントはすでにその話について知っているため、遠回しな言い方はもはや必要ない。
「ダルド、君にも聞いてもらいたい話なんだ」
「…わかった」
「アレス。数日前の晩…私が精霊の国を訪れた話は知っているかな?」
「はい、なんとなくですが…」
使者として帰還した日…遅くまでガーラントやカイたちと話をしていたあの夜の出来事だ。
彼は魔術師の塔ですでに眠りについていたが、城全体が大きな騒ぎとなったため少なからずアレスの耳にも噂の端々が飛び込んできたのである。