狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
XXXⅨ 不思議な声Ⅱ
はやる心を抑え、必死に初心者用の剣を振るうカイ。
彼は今まで幼すぎるという事もあり木製の武器しか手にしたことがなかったのだ。それゆえ楽しみでしょうがないのもよくわかる。
(キュリオ様はなぜ急にカイを…)
ブラストは彼から離れた場所で腕組みをしながら己の主(あるじ)であるキュリオの真意を掴めずに頭を悩ませていた。
人手不足とは考えられないため、カイでなくてはならない何かがあるのだろう。
(ダルド様まで動かすとなると…キュリオ様の側近か?)
「…まさかな」
自分の考えが大きくはずれていることはブラストにもわかる。
しかし、これほどまでにカイが心配なのはやはり彼の教官として常に傍で見守っていた情のようなものだろうか。
「おいおっさん!!いつまで休憩してんだっ!」
練習の相手をしろとばかりに大声をあげてこちらに向かってくるカイをみて、ほんの寂しさが込み上げてくる。
「もうちっとこの手ででかくしてやりたかったな…」
「あ?何言ってんのかわかんねぇよ!俺はもっと強くなりたいんだっ!!」
意気込んでブラストに詰め寄るカイ。
しかし…
「はっはっ!!すぐに強くなれるわけないだろうっっ!!お前はまずその口の訊き方をだな…!!」
「ぐぇ…っ!!いででっ!!」
ブラストの大きな手にグリグリと頭を撫でられ、夜までみっちり剣士としての心構えと立ち振る舞いを嫌というほど聞かされたカイだった―――