狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのⅥ
―――ガラガラ…
静まり返った教室。遅刻の何が嫌かって、この注目を浴びる一瞬がたまらなく恥ずかしいのだ。
「おっ、やっと来たな。遅いぞ二人とも。仲良くくっついていないで早く席に着きなさい」
四十代にしては若く見える担任教師が大幅に遅れてやってきた二人の生徒を嫌味もなくさらりと茶化す。
そして、その言葉にどっと沸いてしまったクラスメイトたち。
いつもならば即刻否定の声をあげるシュウなのだが…
「俺はこいつの怪我が残っちまったら…責任とって嫁にもらうからな!!誰もアオイに手ぇつけんじゃねぇぞ!!」
明るめの茶色の髪を揺らしながら堂々と宣言するシュウ。運動神経抜群にも関わらず、部活にも入らない彼はどうやらひとり暮らしをしているようなのだ。
そのため学校が終わるとバイトに向かい、自ら生計を立てているという噂。よって、すでに社会を経験している彼はどこか大人びた印象を受け…とても同級生とは思えないほど頼りがいがある。
「シュウ…」
女子は興奮し、頬を赤らめる中…男子は次々と冷やかしの言葉を浴びせる。
「シュウ子供は何人だっ!?結婚式には絶対俺たちを呼んでくれよな!!」
「アオイちゃんがシュウのものになるだとーっ?!ちきっしょおおおおっ!!!」
と頭を抱えている者まで現れる始末だ。
すると…
―――コホン…
と、突如…上品な咳払いが聞こえ…
「…?」
誰のものかと不思議に思ったシュウとアオイが担任教師へとおもむろに視線を向ける。
「すみませんアラン先生。自己紹介の途中でしたね」
「…アラン先生?」
担任教師が二人に早く席に座るよう促すが、気になったシュウとアオイは顔を担任の奥にいる人物に向けたまま自分の席を目指して歩いた。
やがて…アオイの視界に飛び込んできたのは…
「初めまして。シュウくんに…アオイさん。臨時講師のアランと申します」