狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのⅩⅣ



「…さて、なんのことでしょう?」


まるで心当たりがないとでもいうようにセンスイは顔も上げず、傷の具合を確かめている。


「シュウ…口は悪いけど、優しい人なんです。でも、それで誤解されてることが結構あって…」


「……」


無言のままアオイの足を丁寧に拭き続けるセンスイ。


「…だから…」


消え入りそうな少女の声。
顔を見なくともわかる…無言の私に対し、いかに彼女が不安を抱いている事か…


事実、アオイの世界から見れば…センスイが不機嫌になり口をつぐんでいるようにしか見えていないのだ。


「…っ…」


やがて…瞳を潤ませたアオイの視界はぼやけ、自分のせいで友人が嫌われてしまった…と悲しみの涙が頬を伝った。


―――ポタッ


大粒の涙がスカートを濡らし、彼の視線の先でそれは切なくはじけて消える。

まさか…と思いながら顔を上げるセンスイ。


「アオイ…さん?」


そしてズキリと痛んだセンスイの心。アオイの涙を拭おうと自身の右手を伸ばしかけた。


が、しかし…


「お願いっ…シュウを嫌いにならないで…」


まるで私に許しを請うように泣き続ける彼女。
だが…それは紛れもなくあの少年の事を想い流す涙だ。


(…彼女がシュウという少年をかばう程に私の心は乱されていく…)


「…っ…」


伸ばしかけた手を握りしめ、センスイは強く唇を噛んだ。


そして、雑念をはらうように彼は勢いよく立ち上がった。


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