狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのⅩⅩⅩⅡ
『…お父様?』
キュリオとの約束は確かに夕食後だったが、部屋に来るほど急ぎな用だったのだろうか?
ふと彼の視線がアオイの可愛らしいベッドに注がれる。
(枕がふたつ…)
『…カイを迎い入れる準備でもしていた?』
『はい…、準備だけしてからお父様のお部屋に行こうかなって思って…』
『…私はすぐにアオイを解放するとは言っていないはずだが』
腕をおろし、ゆっくり近づいてくるキュリオ。
『…えっと、お父様…御用件は何でしょう…』
ジリジリと近づいてくる父親に圧倒され、後ずさりするアオイ。
『なぜ逃げる…』
『いえ、別に逃げているわけでは…』
視線を下げたアオイの腕をキュリオが掴んだ。そしてそのまま引き寄せられ、腰を抱かれる。
『…私の用件はすぐに終わるものではないよ』
唇が触れ合いそうなほどに顔が近づき、キュリオの色香がアオイの神経を甘く痺れさせていく。
『それはどういう…』
『…お前の一生、いや…』
『アオイの永遠の時間を要することになるだろうね』
『それって…』
サラリと流れた美しい銀髪に目を奪われていると、
―――次の瞬間…
頬に感じるしっとりと柔らかい感触。驚きにキュリオの瞳を覗き込むアオイ。
『おとう…さま』
瞳が合うと…腕を掴んでいたキュリオの手が離れ、今度はその指先が物欲しそうにアオイの下唇をなぞった。
それはまるで…片想いの彼女への口付を必死に堪えるかのような、甘く切ない仕草だった―――