狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのXLⅡ
アランのその言葉を聞いてアオイの胸はチクリと痛んだ。
何事も難なくやり遂げてしまうキュリオは、悠久の王になるために生まれてきたような人物だった。王である事に対して不満をもらしたことはないが、人として今までいくつの我慢を強いられてきたのだろう。
(お父様のお心はきっとこの世界よりもずっと広い…)
悲しそうな顔でアランを見上げるアオイ。
すると、彼女を見つめ笑みを浮かべたアランは…
『お前は本当に優しい子だね…心配ない。王は自国の民を心の底から愛している。それが例え…』
『…醜い鬼の血を引いている悠久の子であってもね…』
冷やかな流し目で隣りの少年を見やるアラン。
『…?鬼の血を引いているって…?』
鈍感なアオイは唐突なアランの切り替えしについていけていない。
『…アランてめぇ…っ…』
ギリギリと歯を食いしばりながら立ち上がろうと机に手をかけるシュウ。
『…どうしたの?シュウ』
なぜか怒りの炎を瞳に宿した友人を見て、アオイが目を丸くしている。
『日の光に耐性のある蝙蝠(ニュクテリス)が…まさかティーダ以外にいるとは夢にも思わなかったって話さ』
首を傾げているアオイに微笑み、時計を指差したアラン。
『あ…』
アランはもうすぐ四時限目が終わるということを伝えたいらしく、彼は片手に持った教科書を閉じると静かに教室の後ろへと下がっていく。
『シュウもアラン先生とのランチ、一緒に行くよね?私お弁当持ってきてるから…』
『…勝手に行ってこいよ』
『え…』
『…アランがいるなら俺は行かねぇ』
―――キーンコーンカーンコーン…
四時限目の終了を知らせる鐘が鳴り響くと同時に…、荒々しく立ち上がったシュウはひとり教室を後にしたのだった―――