狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

Ⅴ―ⅴ 穏やかな朝をもう一度


枕に寄りかかった幼子はキュリオに視線を向けられるとニコリと微笑んで小さな手をこちらへ伸ばしてくる。


つられて手を伸ばしたキュリオの指先に彼女の手が触れるとわずかに力が込められ、自分よりも何倍も大きな体を自分のもとに引き寄せようとしているのか両手で指を掴まれる。


「ん?私にもっと傍に寄れと言っているのかな?」


彼女はまだしゃべることが出来ないが、その表情でなんとなく否定と肯定の区別はつきそうだった。穏やかな視線を向けて語りかけるキュリオの瞳を見つめたままの幼子は、真ん丸な瞳をキラキラさせて身を乗り出してくる。


「おっと…」


バランスを崩した小さな体が前のめりに倒れていくのを慌てて支えるキュリオ。軽く持ち上げてもう一度座らせてやると…今度は腕にしがみつき、袖を引っ張られる。

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