狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのLXXⅡ
「アラン先生?先程から難しい顔をしてらっしゃいますけど…少しはお役に立てました?」
すると…
「ちょっといいですかアラン先生」
女教師の問いかけに無反応だった彼だが、頭上から降り注ぐ少年の声に顔を上げたアラン。
「あぁ君か…ちょうどいい。私も話がある」
早々に立ち上がり、胸元から十分過ぎるほどの金をテーブルに置くとアランと少年はそのまま店を出ていってしまった。
「えっ!?ちょっとアラン先生っ!?」
「うっそぉっ!!」
「これでおしまいっ!?私たちどなたかをテイクアウトは…ないんですの!?」
女たちの欲にまみれた眼差しと言葉を背中に浴びながらアランとシュウは人気のない店裏へとやってきた。
「アンタ…悠久の王っていうのは本当なのか?」
「そうであろうとなかろうと…君の人生に何か影響するとは思わないのだが?」
腕組みをしたたまま壁に寄りかかるアラン。そんな彼の態度に苛立ちを隠せずにいるシュウ。
「じゃあっ!!…アオイが悠久の姫だっていう話はどうなんだよ!!」
昂る感情を抑えきれず、アランに掴みかかる。
「…アオイが何者であろうとも、彼女に近づく者は私がすべて排除する」
あくまでもシュウを蚊帳の外へと追い出そうとするアラン。
しかし、少し考えたアランは荒々しくシュウの手を振り切ると…
「そうだな…君に関係のある話と言えば…」
「細く長く生き永らえたければ、一族共々この国に足を踏み入れない事だと…ティーダに忠告するくらいは出来るのではないか?」
ティーダとはつまり、五大国・第五位のヴァンパイアの王の事だ。悠久に生まれながら、ヴァンパイアのハーフであるシュウに激しい嫌悪感を抱いているであろうアランの本音はやはりそこにあった。
「そうかよ…」
ぎゅっと拳を握りしめたシュウはアランの容赦のない言葉にも懸命に歯を食いしばって耐えている。
「アンタもセンスイも嫌になるくらいそっくりだぜ…あいつを…アオイを独占しようとしてんのがみえみえなんだよっ!!」
「アンタらがいるから…あいつはいつまでもあいつらしく生きて行けないんだっ!!!」
「…なんだと?」
(…アオイを独占?奴が…?)
シュウの一言で腕を解いたアランの目付きが変わった。
「やり合おうってならいつでも相手になるぜっ!!」
蝶ネクタイを外したシュウが今にも殴りかかってきそうなアランに向かって構えの姿勢をとった。
しかし…アランの美しい二つの瞳はシュウを見つめているものの、別の事を考えている様子だ。
"私のこの淡い想いごと…また記憶を戻してみたらどうです?"
(淡い想い…)
「…そういう事か…」
アランは眉間に深い皺を寄せ、幸せだったアオイと自分の間にある平穏な日々が何者かに脅かされる事に激しい苛立ちを感じ始めた。