狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのLXXXⅣ
「アオイさん…」
唇の隙間から漏れたセンスイの熱い吐息とともに、甘く囁かれる少女の名。
「セ…センスイ先生…」
恥ずかしさよりも、目まぐるしく変わる急速な展開を前にアオイの思考は噛み合わなくなった歯車のように音を立てて異音と唱え始めた。そして…こうして唇を重ねていても、彼の想いを素直に受け止められない自分がいる。なぜなら、センスイからは切ないような…胸を締め付ける別の感情が伝わってくるのだ。
(…何か違う、これは…)
「先生…先生は私じゃなくて…私に彼女さんを見ているのではないですか?」
アオイは冷静だった。彼を救いたい一心でこうした行動に出たものの、逆にセンスイの…"彼女"へ想いの強さを実感してしまう事となった。
「…なぜそう思われるのです?」
アオイの言葉を耳にし、寂しそうに頬を寄せてくるセンスイ。
「だって、唇を重ねても…とても胸が苦しくて…私、口付けってもっとあたたかいものだと思っていたから…」
仮にも自分へと好意を寄せてくれた相手に対し、失礼を承知でアオイは抱いている違和感を思い切って言葉にのせてみる。
すると顔を離したセンスイは…
「それは…アオイさんの中にキュリオ殿がいるからではないのですか?」
「え…?」
まさかそのような言葉が返ってくるとは思わなかったアオイは面食らったようにセンスイの顔を凝視した。そしてなぜか背後を気にしながらゆっくり立ち上がったセンスイ。
「貴方の言葉で今…はっきりわかりました」
「アオイさんを完全に私のものとする為には、彼の存在はやはり無視出来ないようですね」