狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのLXXXⅤ
「先生、何言って…」
アオイは否定的な言葉を口にするが、センスイはまったく聞き入れる様子がない。
「厄介なのは神剣ですが…私が見たところキュリオ殿と力の差はほとんどありません」
「…久しぶりに楽しい夜になりそうです」
スッと細められたセンスイの瞳はキュリオに対する憎悪のようなものが感じられる。窓辺から差し込む月の光が彼の顔に影を落とし…残酷なまでの美しさが余計に恐怖を煽るのだった―――。
「…お父様とまた戦うのですか…?」
「…えぇ、いつの時代も強い者がすべてを手に入れる…」
「優しさだけでは生き残れないのですよ?アオイさん」
"…貴方のそういう優しさが…彼女と、とてもよく似ているんです…"
そう呟いたセンスイの言葉を思い出し、隠された何かをようやくつかみ始めたアオイ。
「それって…」
言いかけたアオイが彼の傍に歩み寄ると…
―――ドォオオンッッ!!
「きゃぁっ!!」
耳を劈(つんざ)くような爆音とともに学園全体が激しく揺れ、アオイの小さな体は耐えられず、床にその身を投げ出してしまった。
「アオイさんっ!!」
咄嗟に彼女の背へと左腕をまわし、右腕の着物の袖でアオイの体と飛び散ったガラスの破片との間に壁をつくったセンスイ。
「…怪我はないですか?」
「は、はい…ありがとうございます。い、今のって…」
「…えぇ」
揺れが収まった中、バクバクと早鐘を打つ心の臓を押さえ、センスイの腕で小さく頷いたアオイだが…彼の瞳はすでに背後に感じる別の人物をとらえていた。
「…っまさか…」
気が付けば…
窓の外で輝く月の光よりも神々しく、押しつぶされそうな威圧感があたり一面を覆い尽くしている。そしてそれは普段誰よりも彼女に優しく、深い愛情を注いでくれる…とある偉大な男のものだった。
「…どうやらお父上がお出ましになられたようですね」