狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのLXXXⅥ
「私のアオイを連れ去るなど…貴様よほど死にたいようだな」
いつもならば誰よりも優先され、真っ先に互いを想い合う二人。気高い王と、愛くるしいこの姫は唯一無二の関係であり、絆は実にそれ以上のものだ。溺愛してやまない姫を奪われた王の怒りがどれほどのものか…この幼い姫はそれほど自覚していないのだった。
「おとう…さま…っ…」
学園での彼らの戦いが一瞬、アオイの脳裏をよぎり…どうにかしなくてはという焦りがアオイを突き動かした。
(…お父様には力になってもらいたいのに…このままじゃお互いが本当の敵になってしまう…っ!!)
昼間何もできずにいた無力な自分。クジョウという名の男が現れなかったら正直、センスイはどうなっていたかわからない。
「アオイさんが貴方のもの?今まで他の女性と逢瀬を楽しんでいたあなたがその言葉を口にしますか…」
「…逢瀬?私がアオイ以外の女に興味など抱くわけがない。…私も聞きたい事がある。
彼女に近づくために採用になった教師を消したのは貴様だな?」
「えぇ、私ですよ。水鏡に映ったアオイさんをずっと追いかけていました。ある一定の場所からその姿が消えていた理由もやっとわかりましたよ。悠久の城が…あなたの力が関係していたのですね」
「ならば次は…私が貴様の存在を消し去ってやろう」
(…私のせいでまた戦いになるなんて絶対に嫌…っ…!!)
「…お父様!私は攫われたわけじゃないの!勝手な事をしてごめんなさい…お叱りは受けますっ!!でも…せめて話を聞いてっっ!!」
センスイの前に飛び出したアオイは彼を庇うように翼を広げたキュリオへと悲痛な面持ちで懇願する。
「……」
すでに神剣が握られているキュリオの手がピクリと動いた。しかし、何も言わない彼へアオイは続ける。
「…お願いですお父様っ…!センスイ先生たちを助けてっ!!」
「アオイさん…」
自分のために必死に声を上げるアオイの小さな後ろ姿。
そしてようやく口を開いたキュリオ。
「…やめなさいアオイ。お前がその男を庇えば庇うほど…私の怒りは増すばかりだ」
「お前を攫ったその男を私が助けるなど…万が一にも有りはしない」