狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのXC
キュリオが再び眠りに落ちて間もなく、ビクリと体を震わせ飛び起きたのは…隣りで眠っていたアオイだった。
「…っ…!!」
大きく目を見開き、誰かを探すようにあたりを見回している少女。
なぜ自分の心の臓がバクバクと異音を奏でているのか、一体誰を探しているのか…本人もわかっていない様子だ。やがて、自分のいる場所がキュリオの私室だとわかると…
「…わたし…っどうしたんだっけ…」
キュリオによって一部の記憶を戻されてしまったアオイの思考は明らかに抜け落ちていたのだ。
しかし…何かが引っかかり、じっとしていられないのは…彼女から消えた記憶の断片がそれほど重要な内容だったからかもしれない。
(ここ、お父様のベッド…?)
ゆっくり視線を移動させていくと、アオイの視線の先で眠るキュリオの美しい寝顔があった。
「…お父様…」
そして己の腹部あたりにまわされた父親の腕。いつもと変わらない穏やかな夜だったが…
―――ズキン…
ふと、キュリオを見つめていたアオイの胸がぎゅっと掴まれたように痛んだ。切ないような…苦しいような想いがあふれるが、彼女が知る前後の記憶の中からはその原因を探し出す事はできない。
胸元を押さえたアオイが目にしたのは、袖に銀のレースが施されている真っ白なワンピース。もちろん、寝間着として普段からそれに袖を通す事はよくあるので不思議はなかったはずだが…
「…私一体何に疑問を持ってるんだろう…」
記憶さえ抜け落ちてる事を知らないアオイは、両ひざを抱えるようにその身を縮めた。
すると…
明らかに違和感のあるワンピースの下の異物。
(…?なんだろう…)
膝のあたりを服の上から撫でてみるが、いまいちそれが何なのかわからずにいた。
足を崩し、横座りしたアオイが寝間着の裾を上げていくと…
「これは、包帯…?」
(私、怪我をしていたの?)
夢の中、自身がそう言っていた通り彼女の怪我はキュリオやアレスが治してくれるはずだ。よって、包帯など使用したことのないアオイの頭では小さな混乱が生じていく。
そして痛みや、その周辺が敏感ではないことからアオイの手は包帯を解いていく事を決定したようだ。
(…丁寧な巻き方…どなたが手当してくださったのかしら…)