狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのXCⅠ
「…あれ…?」
露わになった右膝だが、傷痕はおろか…その包帯にさえ血はついていない。
おかしいと思ったアオイは左膝の包帯もほどいてみるが、やはり同じだった。
「……」
(…だめ、思い出せない…)
どんなに記憶を巡らせても、怪我をした事さえ覚えていない。
「治療してくださったのはお父様…?」
真っ白な包帯を枕の横に置き、寝間着を整えたアオイはもう一度シーツに潜り込んだ。
大好きなキュリオの胸元に頬を寄せ、腹部にまわされた彼の手をそっと肩から背へとまわす。
(私にはお父様が居てくれるもの…何も心配はいらないわ…)
不安に異音を唱える己の胸へそう言い聞かせ、ゆっくり瞳を閉じたアオイ。
キュリオは、彼を信じてやまないアオイの大きな心の拠り所だが、彼には彼の想いがある。
もし、今回のようにアオイを手にしようとする輩がいれば…その理由が何であろうとも、絶対にキュリオは許さない。
こうしていつも同じだと思っていた二人の考えがいつの間にかすれ違い、わずかな隙間も許せなくなった彼が豹変するのはもう少し先の話である―――。