狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのXCⅢ
―――やがて鳥たちが朝日を浴びて寝床を飛び立つ時分―――…
レースのカーテンの合間から差し込む穏やかな光と風が幼い姫の顔を優しく照らした。
頬を撫でる心地良い風に、薄く瞼を開いた彼女は視点のまだ定まらぬ瞳を擦ろうと左手を持ち上げてみる。
「……」
だが、その手は重く…動きが鈍い。
「…?」
いまだ不思議な感覚が抜けきらぬ様子の彼女は、軽く首を動かして己の手へと視線を向けようと試みた。
すると…わずかに身じろぎした幼子の目元を、長く美しい指先がそっとくすぐっていく。
己の体を自由に動かす事の出来ない彼女だが、その真っ白で繊細な指を持つ人物が誰なのか…確認せずともわかる。
「おはようアオイ」
聞き慣れた透明感のある低い声。彼はまったくもって無意識のようだが、彼女の名を呼ぶその声には甘美な色香を含んでおり、見つめるその美しい空色の瞳はいつもひた隠しにしている彼女への熱い想いが隠されていた。
『おはようございますお父様…』
アオイはそう答えたつもりだが…
「…ぅ、っ…」
うまく言葉を発声することが出来ず、喉から空気が漏れてしまっているのではないかというくらい、おかしな声が出てしまった。
「…っ!?…」
目を見開き、喉元に手を当てようと右手を動かしてみるが…
「アオイ?」
なにやらモゾモゾと動き出した彼女の手をキュリオが優しく握りしめた。
「…どうしたんだい?苦しい…?」
肘をつき、首を傾けていた彼の穏やかな顔がどんどん焦りに強張っていくのがわかる。やがていても立っても居られなくなった様子のキュリオは、起き上がろうと上半身を持ち上げ始めた。