狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのXCⅣ
『いいえ、ただ…声が…』
「…んぅ…」
眉をひそめてじっと見つめてくるアオイ。
彼女のその表情は、体調の悪さを訴えるものではなく…何かに戸惑いを感じているような、そんな物悲しい色をしている。
「…大丈夫、私が傍にいるよ」
キュリオの優しい手がアオイの後頭部と背を支え、彼の大きな腕の中へとその身は包まれていく。
『はい…お父様…』
「……」
これ以上にない安心感に包まれ、ウトウトともう一度眠りに落ちてしまいそうになるアオイ。
「…っ!!」
と、今日が休日ではない事を思い出し、慌ててキュリオの腕から飛び出した。
すると…急に腕を突っ張り、つかまり立ちしようとした幼子に銀髪の王は驚きに目を丸くしている。
「…君が立ち上がるのはまだ早いっ…、アオイ…本当にどうしたんだい?」
(…え?)
(お父様何をおっしゃっているの…?)
そして立つことさえ叶わず、フラフラと座り込んだアオイはキュリオの言葉に小首を傾げている。
心配そうに顔を覗き込まれ、ひんやりとした彼の手がアオイの額にあてがわれた。
「熱があるわけでは…ないようだね」
パチクリと瞬きする彼女の愛らしい瞳を見つめ、体に異常がないと判断したキュリオの表情がふっと和らいでいく。
「もしかして、夢でも見ていたのかな?そういう私も長い夢を見ていたようだが…忘れてしまったな」
「……」
(…夢…?)
小さく笑うキュリオに体を支えられたまま、アオイはあたりを見回してみる。いつもと変わらぬキュリオの部屋に、穏やかな朝。やがて己の体をその瞳にうつし…アオイは驚き、動きを止めた。
(…私、どうしてこんなに小さいの…?)