狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのXCⅤ
ようやく自分の体が一番おかしい事に気が付いた幼子。
銀のレースで縁取られたワンピースをその身に纏っていたはずなのに、なぜかアオイは赤子用のふわふわな寝間着を着せられている。そしてその長さでは本来おさまるはずのない彼女の手足だが、どう見てもちょうど良いサイズのようだ。
(この体…本当に私…?)
(…私、大事な約束をしている…のに…これじゃあ…)
"…包帯、ご自分で取り替えたりなさいませんように。明日も空き時間にお待ちしております"
耳に残る優しい声と…爽やかな彼の大人な香り。
「……」
(包帯…そうだ…私、学園で怪我をして…)
(…誰に…手当してもらったんだっけ…)
思い出そうとすればするほど、頭に靄(もや)がかかり…口元に笑みを浮かべた彼の顔が白く、やがて光に飲まれていく。
そしてその姿が完全に消滅してしまう寸前、光の中の彼はこう呟いた。
"貴方に出会えて、本当に良かった…"
アオイはうっすらと涙を浮かべ、確かに存在したはずの彼へと言葉を紡ぐ。
(私も…です、…ス…イ先生…)
思い出しかけた彼の名を胸の中呟いたアオイは、背を撫でる優しいキュリオの手に瞼が徐々に重くなっていく。
やがて、完全に閉じられた彼女の瞳。キュリオは瞼の上から優しい口づけを落とすと、アオイの小さな体を再び己のベッドに横たえた。
「…君はどんな夢を見ているのだろう。そしてそこに私の姿はあるのだろうか…」
もはや夢での出来事を覚えていないキュリオの悩みは別の方向へと向いている。
(あぁ…彼女が次に目を覚ましたら、きっとお腹がすいているに違いない)
自分の食事よりもまず先に、アオイの食事をと考えたキュリオがベッドから離れようとした…が、
「これは…」
眠りに落ちたアオイの顔横にある真っ白で長い何か。不思議に思ったキュリオがそれを手にし、広げてみる。
「包帯が二つ?眠る前にはなかった…一体どこから…」