狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅦ
アランとして副担任を務めているキュリオはそのまま職員室へ向かい、アオイは自分の教室へと足を運んだ。
すると…すでに着席しているミキとシュウがいつもギリギリに登校してくるアオイの姿をみて仰天している。
「えぇっ!アオイ!?ちょっとアンタどうしたの!?今日早くないっ!?」
「へへっ、実は今日お父様に送っていただいたの」
照れくさそうに笑ったアオイは上機嫌の様子だ。ようやくキュリオが学園に通う事を賛成してくれたようで嬉しいのだろう。
そして楽しそうに会話する二人の元にやってきたシュウ。
「そういやお前父子家庭だって言ってたよな?」
キュリオにより記憶を操作されてしまったシュウはアランとアオイの親子関係をすでに忘れ去ってしまっている。
「うん、どうかした?シュウ」
「それなら…一時限目の授業も楽勝だよな?」
「え?」
―――こうして教室から移動した三人は、それぞれのエプロンを手に持ち身支度を整え始める。
男子はシンプルな黒いものだが、女子のものは赤く、胸元から垂れ下がる布を腰へと巻きつける仕様となっており、腹のあたりで結ばれた紐がとても可愛らしいリボンとなって男子の目を引き付けている。
「なんか馴染んでるね。シュウのエプロン姿、すごくかっこいい」
上手に着こなしたアオイがシュウに近づき、彼のエプロン姿を褒めている。女子特融の自分を褒めてもらいたいがためにいう賛辞とは違い、アオイのそれば本心からそう思っているがために口にしている事がわかる。
一人暮らしをしている彼は夜のバイトをしている。それも料理屋のウェイターなのだ。
「アオイって結構観察力あるかもな!馴染んでるっていうのは否定できないからな!…ってアオイもその、結構似合ってるぜ…」
ひとしきり笑った後、アオイの姿をまじまじと見つめたシュウは照れたように視線を逸らし、頬を染めた。
「あ、ありがとう…」
つられて頬を赤くするアオイ。
すると…
「なぁにぃっ♪似合ってるぜ…だなんて素直じゃないわねぇ!!そういう時は"可愛いぜ…アオイ"でしょっ!!」
世話好きなミキがシュウの口調を真似ながら、彼の首に腕を回し頭を小突いている。
「おい、やめろミキ!!てめぇはもっと女らしくしやがれ!!」
「あたしはいいのーっ♪アオイを守れるように強い女になるんだから!!」
「ミキ…」
心底嬉しそうに微笑むアオイ。と、家庭科室の扉が開き…
「皆、準備は整っているね?さっそく始めようか」
男子生徒と同じように黒いエプロンを身に纏い、髪を束ねたアランが姿を見せたのだった。