狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩ
「出来ましたっ!」
「あぁ、上出来だ。アオイさんはなかなか筋がいい。私の奥さんになって欲しいくらいだ」
「ありがとうございますっ…アラン先生」
「ったく…にんじんの皮むいたくらいで何大げさな事言ってんだよ…」
シュウはなぜか仲の良い二人に口を尖らせながら、次々とたまねぎやじゃがいもを切り刻んでいく。
「…君は料理が板についているようだが…学業そっちのけで働いている分、さすがというところかな?」
以前、料理屋で顔を合わせたことのあるアランはその事をもちろん覚えている。しかし、記憶をいじられているシュウはその事を知らない。
「な…んでそんな事…って、…別に学校さぼってねぇぜ!」
「どうしたの?シュウ」
急に声を荒立てたシュウに驚いたアオイが視線を下げ、見事な彼の包丁捌きに関心の眼差しを向けた。
「すごいっ!シュウってお料理得意なの?」
「ん…?ま、まぁ…俺、一人暮らしだし…お前だって親父しかいないんだったら料理くらい出来るだろ?なんでアランの指導受けなきゃなんねぇんだよ」
「そ、それは…」
不満そうにアオイを見やるシュウに、萎縮してしまったアオイ。
「お父様は…アオイさんの事が大事すぎて…きっと包丁も握らせてくれないのでしょう。これから少しずつ覚えていけばいいんですよ」
「おと…アラン先生…」
油断したアオイは思わず口を滑らせてしまいそうになるが、アランの微笑みに彼女の表情が和らいでいく。
「…私、お料理頑張ります。大好きなお父様に食べていただきたいから…」
「あぁ。楽しみにしている」
まわりに悟られぬよう、小声で話すアランとアオイだったが…誰がどうみても二人の世界に入り浸っているのは明らかだった―――。