狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅢ
「うんっ!いい感じだねぇ♪野菜もちゃんと柔らかくなってるし、これであとは…」
市販されているカレー粉を手繰り寄せたミキ。
「ミキ、それは?」
物珍しそうにミキの手元を覗いているアオイ。
「これはカレー粉だよ。混ぜるだけで簡単に出来ちゃう優れものなのだっ」
「混ぜるだけで簡単に?学園の調理師さんが配合してくださったもの?」
首を傾げているアオイにミキは驚き、シュウと顔を見合わせている。
「いやいや…普通に店で売ってるって。アオイだって買い物くらい行った事あるでしょ?見たことない?このパッケージ」
「あ…そ、そうだね。そういえば見たことあるかも…」
「もうやだーっ!アオイってば!正真正銘のお嬢様だと思ったじゃん!驚かさないでよねっ」
「あはは…ごめんねミキ。最近物忘れがひどくて…茶道の先生の名前も思い出せないくらいなの、私…」
(…茶道の先生?)
アオイは自分で口にしながらハッと息を飲み込んでしまった。
「んー?茶道ってキリュウ先生でしょ?不慣れで茶道の心得も身についてない、あの新米教師」
「キリュウ先生…?そんな名前だっけ?」
(もっと…違う名前だったような…)
腑に落ちないアオイだが、"ミキがそういうのだから…きっとまた自分の勘違いなのかもしれない"と、無理にそう思い込むことにした。
「…お前らもう先に進んでいいか?」
鍋の火を止めたシュウはカレー粉を手にし、二人の会話がいつ終わるかとこちらを伺っているのだった。
「あーごめんごめん!アオイ、メモちゃんと取りなよ?」
「はいっ!火を止めて…カレー粉を…」
「そうそう、完全にカレー粉が溶けてからもう一度火をつけるんだよ。焦げないように弱火で、たまにかき混ぜて…を繰り返すの」
「わかりました、ミキ先生っ!」
「覚えが早くて何よりだ!アオイくん!」
素直なアオイに教えるのはミキも楽しいらしい。ここはここで二人だけの世界を作っており、シュウは少しだけ羨ましそうにその光景を見つめている。