狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅥ
「別に冗談を言ってるわけでは…それに私、聞いた事があるんです。お父様が昔、万が一にも私がヴァンパイアだったら自分の血をあげるって言ってくれていたって」
「…それはお父様がアオイさんを心から愛しているからだろう?」
「はい、だからきっとそれと同じです。自分ではどうする事も出来ない相手に手を差し伸べるのが深い愛なんだって…やっぱり私もそうすると思うから」
「なんか…アンタってぼんやりしてる子かと思ったけど…今のすごい効いたわ…ってか万が一って?どんな状況下でそんな話してたの!?」
「うん、色々とね…」
言葉を濁したアオイと感心するミキ。その隣でゴシゴシと涙を拭ったシュウが涙声で言葉を発した。
「…っ心配すんなアオイ!お前をローストビーフと間違って食ったりしねぇからよっ!!」
「へへっ、ところでシュウ…ローストビーフって何のお肉なの?」
「そこからかよっ!!」
鋭い突っ込みを入れられて照れ笑いするアオイの傍ら、アランの顔は険しいままだった。
「…どこでアオイの教育を間違えた…?」
(ヴァンパイアに理解を示すなど…その身を危険にさらすだけだというのに…っ!!)
近くにいるヴァンパイアのハーフであるシュウを警戒させるどころか、彼を喜ばせてしまった事に苛立ちを隠せずにいるアラン。そしてそれが…
「…やはりお前をこのまま学園に通わせるわけにはいかない」
元より学園に通う事を反対していたアランの行動に火を点けてしまった。
―――そしてもう一人。
「やっぱいい女だぜアオイ…俺の伴侶にはお前しか考えられないな」
中庭の木からこちらを見下げている紅の瞳が獲物を狙うような鋭さでアオイを射抜き、不気味に笑っていたのだった―――。