狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅩ
―――やがて二時限目も中盤に差し掛かり…
アオイは初となるお手製…といっても、にんじんを切り分けた程度のものだが、そのカレーをほとんど口にすることなくため息をついた。
「んーっ!おいしいぃっ!」
その隣りでミキは出来立てのカレーを口に運びながら感激の声を上げている。
「ん?アオイ、朝何も食べてこなかったんでしょ?おなかすいてないの?」
「…ってかミキは食い過ぎだろ…体調悪いのか?お前」
「あたしは一、二時限が調理実習って知ってたから朝食軽めにしてたの!」
全くと言っていいほど手の付けられていないアオイの皿。心配したミキとシュウが声をかけ、冷たい水を目の前に差し出してくれた。
「…ううん、ありがとう。ただ…あまりお腹すいてなかったみたいで」
(本当はアラン先生にも食べて欲しかった…私が先生の気を損ねちゃったせいでどこかに行ってしまわれたわ…)
水の入ったコップに口をつけ、アオイはぼんやりと扉を見つめた。
すると…
「食事が進んでいないようですね。アオイさんもしかして具合悪いのですか?」
おっとりした声が頭上から降り注ぎ、視線を上げたアオイ。
(この人はたしか…)
「キリュウ先生…?」
「あ、先生!そうそう、アオイ調子が悪いみたいで…」
「…そう言われてみればどことなく顔色が悪いような気がしますね。おうちに連絡して迎えに来てもらいましょうか?」
(そっか…おなかがすいてないのは体調が悪いからなのかな…)
今まで心の問題で食欲が失われた事は一度もなく、アオイは己の変化にとても鈍感だった。
「…大丈夫です、ひとりで帰れます」
「お片付けもしないで…ごめんねミキ、シュウ」
「いいよそんな事…気を付けて帰るんだよ。アオイ」
「俺、送っていくぜ!」
あとをついて来ようとするシュウにアオイは首を横に振って答えた。
(お城が家だなんて知られるわけにいかない…)
「ううん、また明日ね。シュウ」