狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅩⅢ
―――その頃悠久の城では…
「お帰りなさいませキュリオ様!」
開かれた巨大な扉からは気怠そうに髪をかき上げ、長い睫に影を落としながら歩いてくる美しい王の姿があった。
「…キュリオ様じゃと?」
「まだ午前中ですよね…」
別室にいた大魔導師・ガーラントは傍にいるアレスやカイと視線を合わせると、小瓶を手に部屋を出ようとする。すると…
「カイ、おぬしはここに留まるのじゃ。キュリオ様が戻られたという事は…姫様も間もなく戻られるかもしれん」
「えっ…じゃあ尚更俺も行かないと!!」
ガーラントとアレスを横切り、カイが足早に通り過ぎようとした。
「だめだって!アオイ様に見られたら元も子もないだろう!?」
「うげっ」
アレスの細腕に首の根を掴まれ、カイはズルズルと引きずられるように室内へと戻されていく。
「…っだ、だけど…っ!俺はアオイ様付きの剣士なんだぞ!?城に居るのにお仕えしないなんて…出来るわけねぇっ!!」
顔を真っ赤にして刃向ってくるカイ。すると…アレスはため息をつきながら首を横に振った。
「…ほら口調。それも無意識じゃないのか?」
「だ、大丈夫だって!だいたいアオイ様はこんな事で俺を嫌ったりしないはずだろ!?」
「そういう問題じゃない。とにかくカイは薬の効果が消えるまでこの部屋にいるんだ。持続時間だって不明なんだし…」
「儂らはキュリオ様にこれをお渡しせねばならん。害のないものだと証明も出来ておる」
「あとはキュリオ様次第という事になりますね…」
「うむ。アレス行くぞ」
「はい、先生。じゃあ後で昼食を運んでくるから…カイはここで大人しくしていて」
「な、なんだよ二人ともっ!!いつ戻るかわかんねぇって…一年後とかだったらどうすんだよ!?」
「まぁ…その時はその時じゃ」
「…その時はその時ですね。アオイ様の事は私に任せて…カイはミルクでも飲んでいるといいよ」
「はぁぁあああっっっ!?」
無情にも叫ぶカイを残して堅く閉ざされた扉。あまりにも広すぎるこの悠久の城で、彼の声はキュリオに届いていないのだった―――。