狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅵ―ⅰ 警戒心
「キュリオ様!しっかり!!」
慌てた大臣が彼の体を大きく揺する。大臣は他国の者かもしれないこの赤子にひどい警戒心を抱いているのだ。
「誰かおらぬかっ!!」
なおも激しく騒ぎ立てる彼の声に、落ち着いた声と手がそれを遮る。
「騒ぐな…何事だ」
艶やかな銀髪をかきあげながら上体を起こしたキュリオは片膝を立て、隣にいる大臣を睨んだ。彼にしては珍しく不機嫌な様子を見せる。それもそのはず、傍らには気持ちよさそうに寝息をたてている幼い子供の姿があるからだった。
「キュ、キュリオ様!
…ハッ!も、申し訳ございませぬ!」
急いでベッドから離れた大臣は床に平伏せるように頭をこすりつける。
「…そこまでしろとは言ってないぞ」
キュリオは大臣に向けた鋭い目つきを緩めると、隣で眠る幼子へと視線を移動させた。左手で彼女の柔らかそうな前髪を梳き、小さな体にシーツをかける。