狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅩⅦ
「…っ!?」
はっとしたアオイは顔を赤く染め、慌てたように顔を背ける。
「わかりやすい拒絶の仕方だな…まぁいい。今日は騎士(ナイト)の役を買っちまったんだ。見逃しておいてやるよ」
「み、見逃すって…」
小悪魔的なウィンクを投げられ、アオイの体は羞恥心に熱く火照っていく。
(きっとご冗談だわっ!お父様のお知り合いなら……し、紳士的な方ばかりのはずだしっ!!)
と、その時―――…
「君、王立学園の子だね?学生がこんな時間に出歩いているなんて一体何を…」
「あ…」
背後から話しかけられ、振り返ったアオイが目にしたのは…民を守るため昼夜問わず巡回している馬に跨った警護兵だった。
「…アオイ様っ!?」
「こんにちは。お勤めご苦労様です」
「はっ!有難きお言葉!!」
勢いよく馬を下りた彼は片膝を付き、アオイへと頭を下げる。
「し、しかし…姫様、このような時間になぜ…」
心配でしょうがないと言った様子の彼は、彼女の背後にいる男の姿を視界に捉えた。
「…そちらの方は?」
立ち上がった兵は疑うような視線を青年へと向け、アオイとの間に立ちふさがろうとする。
「お父様のお知り合いで…お城まで私を送って下さっているところなの」
「左様でございましたか!失礼いたしましたっ!!その…よろしければお名前をお聞かせ願えますでしょうか?」
キュリオの名を聞いて安堵した彼は心から非礼を詫び、深く頭を下げた。そして次に会った時に失礼のないよう…彼の名を記憶に留めようと心掛けた警護兵は姿勢を正して人好きする笑顔を見せた。
(あ…そういえば私も知らない…)
「お兄さん良かったらお名前を…」
「ティーダだ」
間髪入れず、そう答えた彼の顔は無表情だった―――。