狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅩⅩ


「……」


颯爽と馬を駆るティーダの腕の中、じっとしているアオイは困り果てたように彼の顔を見上げている。


(ティーダ様があのティーダ様なら…お父様に合わせちゃいけない気がする…)


「…俺に見とれてるならキスをすると言ったはずだぞ」


ティーダは前を向いたままだが、アオイがどこを見ているか一目瞭然の様子だった。


「そ、それは…っ困ります…」


またも顔を背けたアオイにティーダの強い眼差しが降り注ぐ。


「お前…その唇、まだ誰にも捧げていないだろうな」


「…唇?ですか?」


(…唇って、きっとキスしたかどうかって事よね…)


「た、たぶん…まだ、だと思います?」


「…なんで疑問形なんだよ」


疑いの視線を浴びせられ、アオイは居心地悪く身動きをした。


「はっきり言え。…したのかしてねぇのか聞いてるだけだろ」


強い口調で捲し立てられ、ムッとしたアオイは反撃に出た。


「…ど、どうして言わなきゃいけないんですかっ!?そんな乙女の事情を貴方に説明する必要は…っ…」


「もういい」


今度はあっさりと引き下がった彼にアオイの何かが弾け飛んだ。


「…なっ!?ティーダ様から聞いておいてその態度はなんですっっ!?」


ジタバタと両手足を動かしたアオイは、恥ずかしさと怒りに暴れはじめた。


「おいこら!大人しくしろ!!…お前の態度でわかったからもういいって言ったんだ!」


「…へ?」


彼の声を聞き、ピタリと動きを止めたアオイ。すると…


< 575 / 871 >

この作品をシェア

pagetop