狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅩⅩⅡ
「ただいま…」
城の扉が開かれ…キュリオに続き、早めの帰宅となった姫に女官たちは何事かと集まり始めた。
「…っ姫様…もしやどこか具合でもお悪いのですか?」
「う…うーん、もう大丈夫みたい。ごめんね心配かけて…」
「よかった…キュリオ様も少し前に戻られて、今はお部屋にいるかと思いますわ」
(そっか…やっぱり戻ってきてしまわれたんだわ…)
「…わかった。ご挨拶してくるね」
女官らに見送られ、何となく重い足取りのままアオイは階段を上っていく。
アオイはまず自分の部屋へは戻らず、キュリオの部屋を目指して歩いた。
(お父様怒ってるかな…)
―――コンコン…
片手をあげ、ノックしてみるとすぐに返事があった。
『あいているよ』
キュリオの口調から…すでに扉の向こうにいる人物が誰なのか把握している様子だった。常に王らしい彼の言葉使いさえ、愛娘のアオイに向けられるものは全て砕けたものになっている。
扉を開き、足を踏み入れたアオイ。
「失礼します、お父様…ただいま帰りました。アオイです」
読んでいた本を閉じ、伊達眼鏡を外したキュリオがこちらに向かって歩いてきた。
「お帰りアオイ。随分早いようだが…一体どうしたんだい?」
「あ、あの…私…」
言いかけたアオイの言葉を遮り、彼女の背にある扉を強めに閉じたキュリオの腕。バタンと音がして、わずかな風圧がアオイの髪を揺らす。
「…君の匂いの中に…別のものが混ざっている。アオイ、湯浴みをしてきなさい。話はそれからだ」
(…お父様絶対怒ってる…)
「…はい、わかりました」
自分の部屋に戻ろうと、振り返ったアオイだが…
「…お父様…?」
キュリオは腕組みをしたまま扉に寄りかかり、一向にその場を動く気配がない。
「…この部屋にも湯殿はあるだろう?」