狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅩⅩⅣ
「…はい、すみません慌ててしまって…何も準備せずに来てしまいました」
ポタポタと頬を伝う温かみの残る湯を、タオルを持つ逆の手で拭ったアオイ。
すると…彼女の胸のふくらみがタオルの端からチラリと顔を覗かせた。そんな事もちろんアオイは気づいていない。
「……」
「……(はしたないって怒られてしまうかしら…)」
無言のキュリオに不安を募らせたアオイは、恐る恐る彼の表情を盗み見る。
「…っ…」
そして二人の視線が絡むと、とたんに距離を詰めてきた銀髪の王。
「…おとう、さま…?」
後ずさるアオイだが、いくら広い脱衣所とはいえ…最初から端にいたアオイはあっという間に行き場を失ってしまった。
「…私のバスローブで良ければいくらでもお貸しいたしますよ?プリンセス」
アオイの手の甲へと口付を落としたキュリオが、自分の前を歩くよう彼女をリードし始めた。
「あ、あの…っ…」
(後ろに立たれるとそれはそれで…)
ドキドキと高鳴る心の臓と、キュリオの不可解な行動にどうしたら良いかわからず…アオイは咄嗟に、とある行動にでた。
「アオイ…ずっとそうしている気かい?」
「…い、いいえっ!?王様の前を歩くなんて失礼かなぁって思いましてっっっ!!」
懸命にタオルで体を隠しながら壁に背を付け、横歩きを試みたアオイの姿にキュリオは冷やかな視線を浴びせている。
「なにを言い出すかと思えば…もちろんアオイはその限りではない。お前は私の特別なのだから…何度言い聞かせればわかる?」
「えーっと…学校に通うようになって、ますますお父様は偉大なんだなぁって実感したというか…簡単に甘えちゃいけない気がして…」
「…なぜ?」
眉間に皺をよせ、アオイとの距離をさらに一歩詰めたキュリオ。
(…い、今だっ!!)
アオイはキュリオに向き直ると、今度は扉に背を向け…後ろ向きに歩き始めた。
「お、お父様そのままっ!そのままでいてくださいっっ!!」
「今のは…私から逃げるための口実かい?」