狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅩⅩⅥ
「お、お父様待って!お願いですから後ろを向いていてくださ…いっ…」
恥ずかしさのあまり立てた膝をクロスさせ、両手で胸元を押さえたアオイは懸命に抵抗を試みた。しかし…
「…今頃隠しても無駄だよアオイ。私の瞳は君の滑らかな曲線をとうに焼き付けてしまったのだから…」
(あぁっ…私なんてことを…っ!!)
「そんな事言わないで…っ…」
両手で顔を覆ってしまいたいくらいの羞恥に耐えているアオイだが、それではまたキュリオに裸体を曝してしまう事になるため…顔を背けるくらいの事しか出来ないでいる。
「…恥じらう姿も実に美しい…私だけの可憐なこの花は、いつの間にかたくさんの蝶を魅了しすぎていたようだ」
「…可憐な花…?蝶って…」
アオイは背けていた顔をキュリオへと戻し、唐突な彼の言葉に目を丸くして聞き返した。
「…今まではどんな花も皆同じだと思っていた。…しかしあの日見つけた…君というたったひとつの…」
ベッドに腰掛けたキュリオはそのまま体勢を変え、倒れているアオイの顔を挟むように両手をつきながら体重を預けてくる。
「私を満たす事の出来る…甘い蜜を秘めたお前を私は手に入れたんだ」
「私はお父様のものです、身も心も…ですが…っそれは娘としてではないのですか…?」
自分にのしかかるキュリオの重みを全身で感じながら、近づく妖艶な彼の瞳に体が震えた。
「…アオイはおもしろい事を聞くね。"蝶"にはもちろん私も含まれている。君を娘として見ているのなら…私も"花"になるとは思わないかい?」
(…お父様が私を娘としてではなく…)
「…そんな事って…」
顔にかかる髪を指先ですくわれ、そのまま下へと移動したキュリオの手が…胸元を隠しているアオイの両腕をやんわりと解きはじめた。
あまりにも自然なキュリオの動作に思わず油断してしまったアオイ。
「……」
「…抵抗しないね。これはお前の蜜を私がいただいても構わないと捉えていいんだね?」
「…っそ、それは…」
嬉しそうに目を細めたキュリオはアオイの体を強く抱きしめ、彼女の匂いを改めて確認するように美しく整った鼻先を押し当てた。
(どうしよう…ここで私が拒絶してしまったらお父様はどうなってしまうの…?)
回避する手立てを見出せないアオイはきつく目を閉じて全身を強張らせている。すると…
「…怖がらないでアオイ。お前は私にその身を委ねていればいい…」
「もう二度と他の蝶が寄り付かないように…その蜜を私が吸い尽くしてあげよう」