狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのⅩⅩⅩⅦ
サラリと流れたキュリオの銀の髪がアオイの肩をくすぐり、やがて別の感覚が真っ白な彼女の首元を這うように動き始めた。
「…っ…」
あたたかく、しっとりと濡れたそれがキュリオの唇であることに気づいたアオイはより一層その身を強張らせ始める。
(…私もお父様が大好き…でもっ…まだそういうのじゃなくて…)
「お、お父様…っ…やっぱりいけません、こんな事…っ!!」
愛情よりも恐怖が勝ってしまったアオイは両腕に力を込めて父親の胸を力いっぱい押し返す。
するとキュリオのバスローブがわずかに肌蹴(はだけ)、アオイの指先が彼の肌に直接触れた。
「…怯えなくていい。…私の身も心も全て…君のものだ」
この世のものとは思えない美貌と実力を誇る悠久の王・キュリオ。彼が己の生涯の中でたったひとり…心を寄せ、互いの熱を分かち合いたいと願った相手が愛娘・アオイである。
キュリオは胸元に添えられたアオイの手をとり、慈しむような口付を指先に落とした。
「…暗がりで不安そうに私のローブを掴んでいたあの小さな手が…こんなにも美しく、色気にまみれていたとは…」
キュリオの手と唇がアオイの腕をのぼり、肘を伸ばすよう誘導されると…柔らかな二の腕部分に甘い痛みが走る。
「…っ…!?」
普段痛みを感じたことのない敏感な場所に刺激を受け、苦痛はそれほどでもないにも関わらずビクリと体を震わせてしまったアオイ。そしてその痛覚は…
「この手が他の男の手を取るなど絶対に許しはしない…」
己の首にアオイの腕をまわし、低く呻(うめ)きながら彼女の腕に歯を突き立てていたキュリオによって齎(もたら)されたものだった―――。
「震えているね…お前が苦痛に涙を滲ませる姿は私も見たくはない。しかし…」
二の腕から胸元に唇を這わせていたキュリオの顔が、彼の呟きとともにゆっくりとアオイの耳元へと近づいてくる。
すると、腹部のあたりでゴソゴソと動いていたキュリオの手が何かを引き抜いた。
―――シュル…
「…?」
その音に首を傾げているアオイだが、近づいてきたキュリオと目が合うと…
「…これからする事は君が今までに感じた中で…もっとも激しい痛みを伴うかもしれない。それにもし…アオイが泣き叫んでも私は止めてやる事が出来ないだろうね」
残酷な事を口にしているキュリオだが、その眼差しはとても幸せそうだ。
「…今から痛い事をするの、ですか…?」
「大丈夫、甘い痛みさ」
意味深な言葉を残し、額にキスが落ちてくる。すると…